波照間島の家

石垣島から高速船で1時間、日本最南端の波照間島は、
石積みの屋敷囲いや、フク木の防風林に囲まれた伝統的な赤瓦の民家やウタキ・・・等、
昔ながらの集落景観が残っている。
最南端という地理的要因に加えて、こうした心に残るたたずまいや、
自然の美しさ、島人シマンチュのちむチュラさに魅せられて観光客が多く訪れる・・・

 

しかし、こうした集落景観も老朽化した赤瓦の民家はトタン茸きやコンクリートの箱の建築に変わり、
また石積みはブロック塀に変わり、
フク木も伐採されて昔ながらの風景は消えつつある・・

 

初めてこの島を訪ねた時、施主のお父さんから、
変わりゆく島の風景への危機感や島を思う気持ちをお聞きし、
その情熱に心動かされた。
プロジェクトは赤瓦の民家の再生と長男夫婦の住まいを増築し、
2世帯住宅として機能することが求められた。

 

島の風景をイメージし、島の景観の邪魔にならない、
島の生活に合った建築(住まい)のあり方を大きなテーマとして捉えた。

今回提案した風の土間やアシャギは空間を繋ぐ役割だけでなく
訪れる人々(兄弟や島人たち)の交流の場として機能し、
島のムラヤ-・・・・的役割を担うようにイメージした。

 

この土間には、永い間母屋を守ってきた古い瓦の破片を家族みんなで埋め込み、
余った古材を使った施主手作りのテーブルとベンチが置かれている・・・
母屋の侵食している小屋材や柱は、
親戚のおじぃからゆずり受けた民家の古材を再利用し、
風の土間の新しい小屋組みの中央にも一部使用し、島(人々)の記憶を繋いでいる。
西側のスージグワァーには兄弟や仲間たちで、新しく石を積上げ、
屋根には古瓦を使った漆喰シーサーが、島を見守る。
将来ナーには古瓦をリサイクルしたヒンプンが仕上る予定である・・・・・

 

この家づくりの小さな物語が島人たちの心に触れ、
島の景観の保存について考える、
大きな物語が生まれるきっかけになればと願う。

 

外観をみる
 

 

ナー(庭)とスージグヮーをみる

 

 

 

母屋と親世帯L・D・Kをみる

 

 

2階子世帯とアマハジデッキ、風のテラスをみる

 

 

敷地の一角にある “ほこら” と石敢當

 

 

 

石積みのワークショップ

施主のお父さんが、生前話していた島のブロック塀を
かつての石積みに戻したいという思いを引き継ぎ、
石積みのワークショップには、
施主・家族・島の人達がたくさん集まった。
一人一人が色々な思いを込めて積み上げた石垣は、
島の風景と一体となり、島人や旅人を癒す。
工事中に他界した施主のお父さんの島への思いが、
人を動かし、少しずつこの島の風景(景観)が戻っていく事を願う。

 

 

施主の弟が手作りしたシーサー

 

 

 

敷地を囲む石積み・フク木並木・スージグヮー、記憶を繋ぐ島の風景