敷地は北側にクサテ・ムイ(森)が残り、
南側にはウージ畑(さとうきび)が広がり、
その先に水平線を望む、眺望の良い傾斜地である。
施主は敷地近くの古民家(築120年)で
“茶処 真壁ちなー” を家族で営む若夫婦。
主人はウチナームーク(長崎出身)で、
この古民家で働きながら沖縄の空間への思いと
ウヤファーフジ(ご先祖)への思いを募らせていった。
これらの思いをたくした住まいは、沖縄の民家にみられる “ナー(中庭)”、
“アマハジ” を “土間空間(内外の中間領域)” として建築化し、
それを全ての中心に配置し諸室を緩やかにつなぐ構成とした。
外部に開放されたこの空間は、
かつて古民家のナーで行われてきたさまざまなストーリーを
新たな世代へ受け継いでいく空間となっていくことだろう。
完成間近にユイマールで行ったナーの土留め壁の漆喰塗り。
後々、この壁に陶器を埋め込んだり、模様をつけたりする予定だという。
これからどのような物語りが展開されていくのか、楽しみな住宅である。
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2階土間空間
土間を見下ろす
アシャギ(和室)
半地下に埋め込まれたアトリエ
2階リビング
傾斜するナー(庭)の土を留めるために設けた土留め壁。
コンクリートでそのまま仕上げるのも一つの方法だが、
ここではもともとこの地域に残る風景、雰囲気を意識し、
漆喰塗りをユイマールで行った。
また、漆喰壁の上にのせた赤瓦は、以前ちなーやー(家主が営む沖縄の古民家)の
屋根として茸かれていた赤瓦を再利用した。
後々、この壁に陶器を埋め込んだり、模様をつけたりする予定だという。
親から子へ、子から孫へ・・・思いが形となり伝わっていく。
住宅は買うものではなく、一緒につくりあげていくもの。
その思いを感じることのできる場所となったに違いない。
茶処
真壁ちなー
家主家族が営むお店。
明治24年頃に築かれた民家で
沖縄そば、コーヒー、ハーブティーなどを楽しめる。