沖縄市立美東幼稚園園舎新増改築工事

幼稚園は、発達が著しい時期の幼児たちが、その貴重な時間を過ごす「育ちの場」である。
友達や先生との関わりや、自然との触れ合い、様々な遊びを十分に経験し、
「豊かな心」と「健やかな体」を育む施設が求められる。

 

本計画に於いては、園庭を包み込むように園舎を配置し回遊性のある平面計画とすることで、
見守られた環境の中で、幼児たちの「自発的な活動や遊び」を誘発する空間づくりを目指した。
また、吹抜けを介して上下階の空間をつなげた遊戯室を施設の中心に配置することで、施設としての一体感をもたせた。
さらに、隣接する美東小学校校舎や正門前広場とのつながりを意識し、
校舎や外構、植栽のデザインをリンクさせることで学校全体に統一感をもたせた。

 

プランは、園庭と遊戯室の「2つの楕円」を軸とし、回遊性をテーマに計画した。
敷地面積と園庭の広さの関係から必然的に一部2階建てとなったが、
1階と2階のつながりやタテの回遊性も生まれるよう計画した。
遊戯室は開放的な吹き抜けの空間とし、遊戯室を中心に上下階も含め全体がつながり
1階にいても2階の雰囲気がわかる施設づくりとした。
また、お遊戯会などイベント時にはホール、階段、2階の廊下を観覧席として利用できるプランとした。

 

この内外(うちそと)がつながる空間で、幼児たちが自発的な活動や遊びを通して豊かな心・健やかな体を育み、
シンボルツリーとして園庭に植えたアコウや正門前広場の木々たちとともにのびやかに成長することを願う。

 

 

当初の計画案(スケッチ・模型)
当初の計画では、楕円形の園庭を築山階段・ブリッジ・スベリ台・屋上広場で上下をつなぎ回遊性のある園庭空間を目指した。

 

 

 

アプローチ・外観を見る
小学校の正門前広場に面する大きなアマハジ空間と石積みのヒンプンが園児や保護者を迎え入れ、
正門前広場の「日影空間」や「雨やどり空間」として待ち合せの場に利用する。
土間には卒園児と在園児が描いた思い出のガラス玉を埋め込んでいる。

 

 

 

園庭・デッキ・砂場
園庭を包み込むような深い軒の出と半戸外の「アマハジデッキ」は影を生み、涼風を呼ぶ快適な環境になる。
園庭広場から見える園舎壁面には、旧幼稚園の壁画デザインをモチーフにしたペイントサインが園庭で遊ぶ子どもたちを見守る。

 

 

 

昇降口
入り口横に配置した「県産木タイル壁」が、園児達を迎え入れる。この木壁は様々な木材に触れ、香りを楽しむことができる。
自然との触れ合いの中で、子どもたちの「豊かな心」を育む役割のひとつとなっている。
使用した木材は、園児達にもペーパーかけをしてもらい、
10種類ある県産木材の手触りやにおいなどそれぞれの違いを体感しながら綺麗に磨いてもらった。

 

 

 

遊戯室
楕円形に包まれた大空間としなやかな膜天井を組み合わせることで、やわらかな表現を生み園児達の心地よい空間を創出する。
木組の畳間は大空間の中にあるスケールダウンされた隠れ家となり、家庭的な雰囲気の中でものとの触れ合いを通して
「自発的な活動」を引き出す空間となる。

 

 

 

保育室
各教室間の棚は半固定棚としており、将来2室を1室としてのフレキシブルな利用も可能とした。
幼稚園は園児の主体的な生活が展開される場であることを踏まえ、木仕上げやDENなどを設け、「家庭的な雰囲気」の中で
園児同士や教職員との交流を促すとともに、「自発的な活動」として遊びを引き出すような環境づくりを目指した構成としている。

 

 

 

2階預かり保育室・広場
保育室の屋外空間として、また1階の園庭とつながるように、2階にも芝生広場を計画した。
また、将来の保育室増築にも対応可能な計画としている。
正門前広場・園庭・2階芝生広場・小学校壁面緑化と緑のつながりが生まれた。

 

 

 

職員室・会議室
施設全体の様子が把握でき、落ち着いて職務できる配置や設えとした。植栽ごしにアプローチや園庭の様子が伺える。

 

 

 

ペイントサイン
ペイントとサインのデザインコードには隣接する小学校でも用いた旧幼稚園等の壁画デザインを使用した。

 

 

 

ものづくりの思い出
ものづくりへ参加した思い出として、在園児・卒園児が文字や絵を描いたガラス玉を先生や関係者と一緒に埋め込んだ。
県産木タイルは事前に木材に触ったり、においを嗅いだりしながらペーパーかけを行い仕上げた。
「ガラス玉きれい!」「沖縄にもこんなにたくさんの木があるんだね」「この木いい匂いするよ!」
お友達や先生と楽しそうに会話する姿がみられた。

 

 

 

パース・模型写真